Tags:
ITとLTを採り入れた次世代の物流で、最も選ばれるソリューションプロバイダを目指す
株式会社日立物流
代表執行役社長 兼 取締役 中谷 康夫

物流を通じて物の価値を創出する
グローバルベースのネットワーク

物流が担う事業領域は幅広い。決められた場所に荷物を輸送することにとどまることなく、保管、荷役、包装、流通加工、情報など物流を取り巻く包括的な展開が求められる。さらには国内外を結ぶグローバルベースのニーズも一層高まっている。こうした課題にワンストップで応えるのが株式会社日立物流だ。
「当社は株式会社日立製作所のグループ会社として1950年に創業しました。当時は日立製作所が作ったモーターや発電機器、家電製品の輸送が中心でした。1986年にシステム物流事業をスタートし、日立製作所グループだけでなく一般のお客様向けにも営業展開するようになりました」(中谷氏)
これまでに培った先駆者としての豊富な実績と信頼で、国内だけでなくグローバルなネットワークも構築。現在では、8割以上が日立製作所グループ以外の取引になるまで広く国内外で展開している。
「当社は情報技術(IT)と物流技術(LT)で、お客様にとって最適な物流システムをグローバルベースで提供することを目指しています。どんなに素晴らしい物であっても、運ばなければ価値を生みません。私たちは物流全体を通してお客様にとっての価値を創り出すことが使命だと考えています。その実現によって、市場から最も選んでいただけるソリューションプロバイダを目指しています」(中谷氏)

物流のアウトソーシング化で
本来のビジネスに経営資源を集中

同社が輸送する品物は、小さな物から、重さ数百トンに及ぶ大型の重量物など多岐にわたる。
「当社は日立製作所の発電プラントに関わる輸送などで、超大型製品の輸送技術を培いました。その実績や輸送ノウハウを生かした重量機工は、電力プラント、鉄道車両輸送などで強みを発揮しています」(中谷氏)
輸送や保管といった個別のニーズに応えるだけでなく、物流に関わるすべての業務を最初から最後までコーディネートする仕組みを構築。サード・パーティ・ロジスティクス企業として、物流のアウトソーシングを一手に引き受ける。同社に委託した企業は、商品の管理、保管、輸送、配送などを自社で対応する必要がない。これにより時間や手間を省いて効率化
が図られ、本来のビジネスに経営資源を集中できるという大きなメリットがある。
「日立製作所研究開発グループと共同で、拠点配置と輸送計画を同時にシミュレーションできるツールを開発しました。『どこに拠点を置くと、どのような輸送が可能か』『拠点をどこに何カ所置くとコストはいくらになるか』など、以前は商談の場から一旦持ち帰って手作業で計算していたものが、その場で瞬時にシミュレーションできます。また、物流現場の運営状況や経営情報が一元把握できる『スマート物流コックピット』の開発を進めています。これにより、自社の見える化も含めて、物流の透明性を高め効率化を図ります」(中谷氏)

ウェアラブル端末を仕分けに導入
物流業界の労働環境改善を推進

 同社は最先端の技術をいち早く物流に採り入れることでさらなる進化を続ける。そのひとつはメガネ型のウェアラブル端末だ。
 「メガネ型ウェアラブル端末を装着すると、どこの場所に何が何個必要か、作業者の視界に表示されます。グローブ型スキャナと組み合わせれば、商品バーコードとの照合も可能です。先端技術によってハンズフリー化が図れ作業効率化や人的なエラーが防止でき、両手が使えることで安全性も高まります」(中谷氏)
 また、日立製作所が開発した低床式無人搬送車「Racrew(ラックル)」を活用した新しいピッキングシステムでは、作業者が歩いて保管棚まで商品を探しに行く必要がない。制御された「Racrew」が商品保管棚の下に潜り込み棚を持ち上げて、棚ごと作業者のいる場所まで運んでくれる。
 「新しい技術を物流に導入することで、物流業界の人材不足や将来的な労働人口の減少にも対応できます。3Kと呼ばれた業界の労働環境を改善することで、女性、高齢者、外国人の方を含め、快適な環境で働いていただけます」(中谷氏)

世界を舞台に戦える人財を育てる

 国内に363カ所、海外413カ所(2016年3月末現在)の拠点を持つ同社は、さらなるグローバル化に向けてダイバーシティ&インクルージョンを推し進めている。
 「海外では特に、企業のブランド力よりも個人としての能力が問われます。全社員総戦力化を目指し、さまざまな研修、教育制度を作っています。例えば数年前から外国人と日本人の社員が長い時間をかけて双方の生い立ちを語り合うグループディスカッション研修を始めました。グローバルで勝負できるコミュニケーション力が身についてくれることを期待しています」(中谷氏)
 同社は海外企業とのパートナーシップも構築し、世界の国や地域でのビジネスモデルにこれまで培ってきた独自スタイルのビジネスを融合した価値あるソリューションの展開を目指す。そのポイントになるのは、日本ならではのきめ細やかなIT、LTを取り込んだ新しい物流の提供だという。「協創で世界に挑む」の社長指針に沿って、自らプラットフォームを築きながら次代の物流を切り拓いていく。
※「Racrew」は株式会社日立製作所の登録商標です。

※「賢者の選択」より転載

記事一覧はこちら
ページの先頭へ