
- 新発想の物流で
社会課題を解決してゆく。 - 株式会社ラストワンマイルソリューション
代表取締役 近藤 正幸
配送物の増加や人手不足など、物流業界が抱えるさまざまな課題を新聞配達店のネットワークを活用した新しいソリューションで解決を目指す、株式会社ラストワンマイルソリューション(以下、LOMS)。
「LOMSはオープンプラットフォームとして、新たな社会インフラを目指す」と語るのは代表取締役・近藤正幸だ。元佐川急便の営業開発課長などを歴任し、流通について豊富なノウハウを持つ近藤に昨今のトレンドやLOMSが提供するサービス、今後のビジョンなどを聞いた。
2017年に設立されたLOMSは新聞販売店に宅配ボックスを設置し、荷物の受け渡し場所として提供する他、物流会社から荷物を預かり近隣エリアへ個別配送するサービスを提供している。現在は、約200店舗で運営中の事業内容について近藤が紹介した。
「これまでの物流センターはご家庭の迷惑にならないように、住宅地から離れた場所に設けられることが一般的でした。しかし、LOMSのサービスで拠点とする新聞販売店の多くは昔から住宅地の中にあり、地域の方に親しまれています。これなら車など移動手段のない方でも気軽に荷物を受け取ることができ、高齢者の方でも安心してご利用いただけるはずです。このように新聞販売店を消費者に一番身近なオープンプラットフォームとして捉え、あらゆる荷物を届けられる新しいインフラとなることを目指しています」
このユニークなソリューションが生まれた背景を近藤は次のように説明した。
「LOMS設立の5、6年前頃から、通販業界やEC事業の拡大によって急激に個人向け宅配の荷物が増えていることは実感していました。また、周囲からも人手が足りなくなるのではと危惧する声が挙がっており、新しい受け皿が必要と考えたのです。ちょうどその頃に毎月開催していたビジネス交流会で、新聞の折り込みや帳合いを行う機械メーカーの方とお会いすることができ一気に話が進みました」
その機械メーカーは約60年の歴史を持ち、全国約16,000店の新聞販売店の内、約9,000店のネットワークを持っていた。
「現在は新聞業界も発行部数や折り込みの減少など岐路に立っています。LOMSのサービスは新聞販売店の空きスペース、空き時間を有効活用するものです。我々としては新聞販売店のネットワークを利用できることに加え、配送に慣れたスタッフの方に仕事をお任せできるので、まさにWin-Winの関係を構築できています」
この事業を進める中で、新聞販売店の配送スタッフから嬉しいエピソードを聞いたと近藤は微笑んだ。
「普段、新聞屋さんは届け先の方と顔を合わせることがありません。しかし、LOMSのサービスで荷物を届けた時に初めて面と向かって“ありがとう”と言われ、それがやりがいになっていると言われました。この言葉を聞いた瞬間、本当にこの事業を始めてよかったと感慨深かったですね」
「起業という夢があったので、資本金を貯めたい一心で佐川急便に入社しました」。
目標の実現に向けて仕事に励んだ近藤は働きぶりが認められ、入社2年後、セールスドライバーからエリアの営業主任へ。その1年半後には当時、最年少の営業管理職へ昇進。さらに1年半後には本部の営業開発課へ配属となり、商品企画から組織マネジメントまで多くの事業で手腕を発揮した。
「私が開発した企画の一つが“ツーマン配送”です。当時は荷物を一人で運ぶことが常識でしたが、家具・家電など大型の荷物が増加する中で現場の負担を軽減しながら、安全かつ迅速に荷物をお届けできるよう二人体制の配送システムを構築し、全国へ広げました」
しかし、充実した日々の中でも起業の夢を忘れることはなかった。「大きなスケールの仕事も多く、やりがいを感じて気付けば入社して10年ほど経っていました。ただ起業する夢は捨てられず、入社15年目に独立しました」
そして、2009年に開業したのが株式会社ロジコンシェル。その社名に込められたのは「ホテルのコンシェルジュのようにありたい」(近藤)という想いだ。
「ホテルのコンシェルジュは、ゲストの相談やオーダーにはとことん身を尽くして応えてくれます。そのように私も物流で悩むお客様のどんな相談でも承り、解決できる身近な存在になりたいと考えて会社を立ち上げました」と近藤はコンセプトを語った。
「一般的な物流コンサルティングよりも、もっとお客様に寄り添った立場で幅広いサービスを提供できるよう心がけています」
近藤にLOMSの今後のビジョンを聞いた。
「現在は、弊社の従業員と全国にいる新聞配達店のスタッフが手を取り合って地域の新聞社や新聞販売店にサービスを広げている状況です。これは嬉しい驚きなのですが、お会いした方に事業を説明すると、ほとんどの方から“それはいいアイデアですね!”“早くサービスを広げて欲しい”といった好意的な反応が返ってきます。それだけ物流業界・新聞業界の課題を解決するソリューションとして期待されているということでしょう。その期待に応えるためにも多種多様な業種の法人、地域のご家庭・個人などすべての人に開かれた物流拠点を一日でも早く全国に広げ、人・物・情報を結ぶ社会インフラにならなければなりません。そして、物流で悩むお客様の新たな選択肢になりたいと考えています」
現在、物流業界が抱える課題の一つに「人材不足」がある。実際に近藤も物流会社の経営者から人材の相談を受けることが多いという。
「この業界は違う業種から入る人が多い一方、物流から離れる人も多いため業界全体として人材の戦力アップがなされていない状況にあります。その中で新聞販売店の配達ノウハウを持つスタッフが、我々の物流にも加わってもらえるのは業界として非常に心強いですね」
また、LOMSは従業員の人材育成を進めながら、新たな人材の獲得・育成にも積極的に取り組んでいる。
「LOMSは物流未経験の方も大歓迎です。業界の経験があると慣例や常識にとらわれ、新しい発想が生まれにくくなることがあります。私たちは世の中にないサービスをつくらなければなりません。そのために新しい視点から物流を考えられる人を採用していきます」。さらに近藤が続けた。「特にスーパーバイザーを求めています。わかりやすく言うと、コンビニのオープン時に本部から派遣されて店員に指導・サポートを行うアドバイザーに近いですね。新聞販売店をサポートしたり、人材教育をしたり、幅広い業務を担っていただきたいと思います」
近藤が経営方針として大切にしていること。それが面接の際にも必ず話す「家族最優先の働き方」だ。
「従業員には、何のために仕事をしているか常に考えてほしいと言っています。どんな人にとっても、最後に大切なものは家族です。家族と円満な関係を築くように勤務でき、家族に何かあった時にはすぐ周りの従業員でフォロー・対応できるような体制を整えています」
また、近藤は会社での役職やポジションに関係なく、何でも言い合える環境づくりにも注力している。「誰にでも何でも言える会社にしたいと心がけています。そのために私自身が率先して従業員が話しかけやすい雰囲気をつくっています。難しい顔をしてPCに向かっていたら、誰も話しかけてきませんよね(笑)。実際に色々な意見をもらって、会社のハード・ソフト両面に活かしています。以前はリフレッシュのための休憩スペース設置なども実現しました。もし提案が不可能な場合は、しっかりその理由も説明するのでオープンな意見交換が図られていますよ」
最後に近藤から『トドクル』読者の方へメッセージもらった。
「私が求めているのは、業界のイメージを一新する新しい発想です。例えば野球場のビールの売り子は、昔は体育会系の男性が多く、力仕事で過酷なイメージの仕事でした。それが今ではアイドルのように可愛らしい女性が働く人気の仕事になっています。そのように物流業界も課題が多い現在だからこそ、ガラッとポジティブなイメージへ変えられるチャンスがあるはずです。物流業界、会社と共に自身も大きく成長したいと考えている方、ぜひ我々と物流の未来を描きましょう!」