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独自のアイデアで医療界のICT化に貢献 病院、調剤薬局と患者の利便性を大きく向上
東京メディコムホールディングス株式会社
代表取締役会長 常永 保夫

手作業の医療事務を電子化する 画期的なシステムに起業を決意

企業においてICT化が当然の時代を迎えた現在、医療界でも電子カルテや、レセプトコンピュータの活用は一般的になりつつある。しかし、その普及を進めるためには確かな先見性で将来を正しく見据えた提案と、医師や看護師、患者などそれぞれの立場や気持ちをく
み取った魅力のある製品が求められた。医療界のICT化に黎明期から情熱を込めて取り組んできたのが東京メディコムホールディングス株式会社だ。創業者の常永 保夫氏が大学卒業後に就職したのは保険会社だという。
「企業年金や医師会年金に関わる業務を担当していました。そこで知り合った医師が、請求書発行などの医療事務が大変だと語っていたのです。小規模な医院では、院長の夫人が担当することも多く、毎月の事務処理が不仲の原因になるほどだと聞きました。その頃、通勤時にたまたま読んだ新聞で、医療事務を電子化するシステムが完成したという記事を読んだのです。これは将来性のある事業だと思い、翌日には開発会社を訪ねてシステムを見学し、すぐに起業を決めました」(常永氏)
約43年前の創業当初は自らもコンピュータの知識を学びながら、大型の電子機器を携え、ほとんど一人で営業活動を行った。
「まず見ていただくことが大切だと考えて、たくさんの医療機関を回りました。戸建て住宅が約800万円で建つ時代に、約500万円という高価なシステムでした。当時の電子機器は大きく営業活動も大変だったことを覚えています」(常永氏)
初年度は4台だったという販売件数も、同氏の「必ずこの商品は売れる」という先見性と情熱的な営業活動により、導入件数は大きく伸びていった。

医師と患者のコミュニケーション
診察券にメッセージ機能をプラス

現在、同社が主力製品のひとつとして掲げるのが電子カルテだ。
「欧米ではほぼ100%導入されている国も多いなか、日本での導入実績は約40%と普及が低迷しています。電子カルテの技術は日々向上し、ピンチイン/ピンチアウトで画像を拡大/縮小したり、3D表示できる機能なども搭載されています。医師の負担を軽減し、患
者様のメリットも図れる電子カルテの普及に力を入れています」(常永氏)
独自のアイデアを盛り込んだ画期的な製品も次々に投入している。
「従来は紙の診察券に名前や番号を手書きするのが一般的でした。当社はこれを濡れても安心な薄いPET式カードにして、診察券に印字ができる機能を付加しました。『医
心伝診くん(いしんでんしん)』は、診察券そのものに、患者様へのメッセージを添えることが可能です。次回の予約日時やその際の注意点など、医師が患者様に伝えたいことを記録できます」(常永氏)
同氏の夫人が使っていた会員証をヒントに、医療界にも応用できるのではないかと考えて開発したものだという。診察券をただ券面として使うのではなく、医師と患者、その家族に向けたメッセージを発信できるツールとしての活用が可能になる。

支払いによる待ち時間を短縮する
病院や調剤薬局の電子マネー対応

同氏の体験をもとに開発したシステムもある。
「病院や調剤薬局のI CT化が進むなかでも、会計に時間がかかることで待ち時間がかかることに私自身も苦痛を感じていました。調べたところ、支払いに掛かる時間は若い人でも約2分、高齢者の場合は4~5分かかることもあります。そこで医療界で電子マネーを使
えるシステムを作りました。『KカザッピAZAPi』は、交通系や流通系など主要な電子マ
ネーに対応した、病院・調剤薬局向けの決済システムです。かざすだけで瞬時に支払いが済むことから、診察や調剤を終え、体調が優れない状態で患者様が待たなくて済みます」(常永氏)
釣り銭の受け渡しミスを防止し、事前に家族がチャージしておけば高齢者が現金を持ち歩かなくてよいと、患者の家族からも好評を得ているという。同社は今後の電子マネー市場の拡大に併せて、医療界での導入も飛躍的に伸びるものと期待をしている。 医療現場の抱える課題と、患者のメリットを両立するソリューションを独自のアイデアと先進のICT技術で実現するのが同社の使命だ。そこには同社の企業理念でもある「お客様にお喜びいただく」という願いが込められている。その思いは、未来の医療を力強く支えて続けていくことだろう。

※「賢者の選択」より転載

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