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「安全を当然にする」を大きな使命に掲げて 信頼を積み重ねる舞台機構専門企業
森平舞台機構株式会社
取締役 営業統括 森 大

創業地の浅草をはじめ全国9拠点
感動を支える舞台機構を手がける

 演劇やコンサート、古典芸能など、舞台の上では鮮やかなライトを浴びて、さまざまなエンターテインメントが繰り広げられる。夢や感動を与えてくれる舞台を支えているのは、観客からは目に付かないたくさんの人や企業の存在だ。
 「当社は1906年に東京・浅草で船舶用ロープや滑車などを扱う商店として創業しました。芝居小屋や演芸場にも舞台で仕掛けに使うロープや滑車を納め、信頼関係を築くうちに、仕掛けそのものを引き受けるようになりました」(森氏)
 1956年、森平舞台機構株式会社を設立。現在の事業を専門とする企業として躍進が続いている。現在、北海道から九州まで全国9カ所に拠点を構える同社は、さまざまな舞台機構を手がけ、その実績は1千件を上回る。舞台機構を通じて揺るぎない信頼を構築し、日本の演出空間を支え続けているのが同社の存在だ。

長期にわたる安心・安全を目指し
保守やメンテナンスにも注力

客席からは目にする機会のない舞台機構とは、劇場やホールに設置されている、手動・電動・油圧などで動作する演出効果用の機器類の総称だ。「舞台機構を大別すると吊物機構と床機構の2つがあります。吊物機構は演出に合わせて大道具や照明、幕類などを吊り込んで自由自在な演出を可能にします。一方、床機構は舞台床の一部を昇降、横行、回転させるなどして、さまざまな演出や転換を可能にするものです」(森氏)
 例えば、開演を待つ観客からの大きな歓声や拍手とともに幕開けする緞帳を昇降するのが吊物機構だ。また、舞台上で演者が床からせり上がる演出や、オーケストラピットの仕組みは床機構だ。「当社ではこうした機構を動かすための操作盤や、安全に動作させるための制御システムなども含め、企画・設計、製作、施工、保守・点検まで一貫して展開しています」(森氏)
 全国にはさまざまな特色を持った劇場やホールがあり、規模や主な使用目的も異なる。「舞台機構も同じものはまずありません。求められる性能や機能は施設ごとに違いますから、ほとんどがその施設だけに向けたオーダーメードなのです。また、劇場やホールは数年で大規模な改修をすることはなく、多くの場合は数十年にわたって使い続けられるものです。そこで、専門知識と最新の技術を生かし、長期間安全で使いやすい舞台機構を目指しています」(森氏)
 同社が最も重要視するのは安全と利便性の両立だ。「安全を当然にする」という言葉を掲げて、安心・安全に使える舞台機構メーカーとして取り組みを続けている。「舞台装置を納入したら終わりではなく、そこが新たなスタートです。劇場やホールが完成してからの保守・点検やメンテナンスにも大きな使命を感じています」(森氏)
 大規模なホールは著名な建築家が設計に携わることも多く、完成後は誰もがその名を知るランドマーク的な存在にもなる。「舞台機構を通じて、当社もその一端を担えることは大きな誇りです。よりよい演出空間をつくりあげるために、伝統を守りながら、独自の技術を研磨して、新たな価値も積極的に提案しています」(森氏)

優れた舞台機構を実現する「人」
チャレンジできる社内環境を整備

 大きな感動を呼び起こすために欠かせない、優れた舞台機構をつくりあげるのは、やはり「人」なのだと同氏は語る。「伝統を継承するのも、新たな技術を生み出すのも人の力が必要です。そこで当社は、自己スキルを高めて業務に発揮できる社員教育に力を入れています。入社後は各部門の仕事を経験するジョブローテーションを導入し、配属後には年齢の近い先輩が生活面の悩みなどもサポートするメンター制度を採り入れたOJTを採用しています」(森氏)
 同社には演劇やオペラ、音楽などジャンルは違っていても、エンターテインメントに高い関心を持つ社員が集まっているという。「興味や関心は仕事をする上で、大きな情熱につながります。その熱意を生かせるように、当社では年齢や経験だけで判断することなく、やる気を重視して誰もがチャレンジできる環境を用意しています」(森氏)
 また同社では建設業にありながら、女性社員の比率が約30%を超えており、産休や育児休暇から復職する社員も増えている。
社員として自分たちが手がけた舞台で、憧れの演目を鑑賞すると、その感動は何ものにも例えがたいのだという。「舞台機構は演劇やコンサート、古典芸能などを創造するための機能ですが、そこに『正解』はありません。また、これまで舞台機構を通じて構築してきた技術は、幅広い分野で生かせる可能性を持っています。新たな人材とともに次世代の舞台機構を創りたいと思っています」(森氏)創業から110年を超える社歴を刻み、信頼を積み重ねることで実績を数えてきた同社は、夢と感動の舞台を支えながらさらなる成長を目指していく。

※「賢者の選択」より転載

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