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エネルギー需要に応え続けてきた100年企業 海外展開と多角化でさらなる成長を目指す
三井松島産業株式会社
代表取締役社長 天野 常雄

産業と暮らしを支え続ける石炭
国内一次エネルギーの1/4占める

 日本の成長を支え続けてきた主要なエネルギーのひとつとして挙げられるのが石炭だ。国内の一次エネルギー供給構造を見ると、石油、天然ガスに次いで、現在もおよそ1/4を担っている。「当社は1913年に長崎県松島の地に松島炭鉱株式会社として創業以来、石炭とともに1世紀以上の社歴を刻んで参りました。石炭は鉄を製造する際に不可欠なコークスの原料となり、また石炭火力発電所や製鉄会社の自家発電の燃料等にも使われています。日本のエネルギーや経済的観点から見ても、石炭は重要
な資源エネルギーなのです」(天野氏)
 石炭は供給安定性と経済性に優れており、世界の電力の約40%をまかなう主要なエネルギー資源だ。日本へも海外から年間約2億トンが輸入されている。

優れた技術で海外石炭事業を推進

 100年以上にも及ぶ炭鉱経営のノウハウと、この間に蓄積した高度な採掘技術は大きな資産だ。同社はオーストラリアやインドネシアなど、海外に石炭生産事業をシフトしている。「当社は、1991年のオーストラリア・リデル炭鉱の資本参加を契機として海外へ進出。その後海外炭鉱開発プロジェクトを本格化させる中、2001年に池島炭鉱が閉山。国内炭鉱経営から撤退した。現在は、稼働中の『リデル炭鉱』の操業と併せ、当社グループの炭鉱技術者をインドネシアに派遣して坑内掘りの『GDM炭鉱開発プロジェクト』を進行中です。また、オーストラリアで取り組んでいる『石炭の探査事業』では、一昨年クイーンズランド州ミモザ鉱区において有望炭層を発見しており、今後、競争力のある炭鉱の開発が出来るものと期待しています」(天野氏)
 ただ単に海外に資源を追い求めるのではなく、自然や地域社会との共存を目指しながら、限りある貴重な資源を生かす取り組みがなされている。「当社が有する坑内掘り炭鉱開発の技術では、露天掘りと違って開発時の森林破壊が抑えられます。森林保全並びに生物多様性保全の観点からも貢献が出来ます」(天野氏)
 日本の優れた炭鉱技術を海外に広め、後世へと伝承するために、インドネシアで現地の若手技術者に技術移転する取り組みも行っている。同社は石炭のプロフェッショナルとして、今後も国内外の資源エネルギーの安定供給に貢献し続ける方針だ。

ニッチ・トップ企業のM&Aを推進
安定的な事業ポートフォリオを構築

 同社は「人と社会の役に立つ」を経営の基本理念に掲げ、あらゆる環境の変化や社会のニーズに対応し、しなやかに自己変革できる企業を目指している。「将来の資源エネルギービジネスの変化に対応し、収益基盤の安定化・多様化を図るため、石炭生産事業への継続的な取り組みとあわせ、新規事業の育成・強化を積極的に推進してきました。これまでに取組んできました新規事業の実績は、着実に業績面に成果として現れてきており、いずれもユニークな発想や独自の技術を持つ『ニッチ・トップな企業』です」(天野氏)
 2012年に子会社化した株式会社エムアンドエムサービスは、民間企業や地方自治体が所有する保養所、研修所からホテル、旅館といった公共の宿まで、様々な施設の運営受託を行っている。
 2014年には日本ストロー株式会社を子会社化した。同社の主力商品である伸縮ストローは紙パック飲料などに数多く採用されており、国内の伸縮ストロー市場では約65%のシェアを有している。 また、2015年にはオーダースーツ業界の先駆者の花菱縫製株式会社もグループに加わった。完全国内縫製をポリシーに車椅子利用者や目の不自由な人向けの商品も開発。3月には19店舗目となる「銀座店」をオープンした。
 そして今年2月にはクリーンサアフェイス技術株式会社を子会社化。液晶テレビやスマートフォン等を製造する際に用いられるガラス基板に、金属の特殊な膜を貼付け加工製造する会社だ。この成膜加工では世界トップレベルの技術を有している。
なお新規事業はM&Aだけに留まらず、社内ベンチャー構想から誕生した再生可能エネルギー事業、介護事業にも取組んでいる。
「石炭生産事業を祖業とする当社としましては、昨今高まりを見せるCO2 排出と地球温暖化の問題については課題として充分に認識しております。今後も、これらの流れを注視しつつ、エネルギー(石炭)事業においても次の100年に向けてしなやかに自己変革すべく努力してまいります。併せて、新規事業の育成・強化にも引き続き注力し、安定的な事業ポートフォリオの構築に努めてまいります」(天野氏)

※「賢者の選択」より転載

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