Tags:
地方都市から世界に領域拡大し 成長を続けるデベロッパー
株式会社マリモ
代表取締役 社長執行役員 深川 真

設計事務所からデベロッパーに事業転換 地方都市を中心にトータルプロデュース

現在では地方都市にも多くみられるマンションだが、かつては大都市を象徴する住居であった時代が久しく続いた。地方は戸建てという不動産業界の一般的なイメージを打ち破り、需要を掘り起こすことでユーザーからの大きな支持を得て、企業の成長に結びつけたのが株式会社マリモの一面だ。
「当社は広島市で約20年間、設計事務所を展開していました。まだ住居を所有することは文字通り夢のマイホームという存在で、理想の住まいはなかなか手の届かない時代だったのです。しかし、設計事務所で培ったノウハウを生かし、価値のあるマンションを適正な価格で提供すれば、喜んでいただけるお客様がたくさんいるのではないかとマンションデベロッパーへの事業転換を図ったのです」(深川氏)
設計事務所からデベロッパーへと転身した例は、業界内でも珍しいという。
「既に大都市は多くのデベロッパーが競い合っている状況でした。地方発祥の企業が新規参入する余地はありません。かといって、創業地である広島には当社が設計事務所として取引していたデベロッパーがあり、これまでお世話になった方々に背を向ける事業は成り立ちません。そこで、広島エリア以外の地方都市に目をつけたのです」(深
川氏)
同社は1990年10月、佐賀県鳥栖市に自社分譲マンション1棟目となる「グランドール鳥栖」を竣工。当初は1年に約40戸のマンションを1棟、その後は年に2棟というペースで、山口県岩国市、島根県松江市、愛媛県今治市など人口10万人から30万人という地方都市から実績を積み重ねていった。
商品開発・施工監理・販売まで自社一貫体制でトータルプロデュースして、永く愛せる住まいづくりを追求。創業40周年になって、発祥の地である広島に同社初の物件を販売、さらに名古屋や東京など大都市圏にも進出し、しだいに同社の分譲マンションである「ポレスター」のブランドが浸透していった。現在では北海道から九州まで40都道府県に330棟以上を数え、21,000戸を超える家族にかつては夢だった、理想のマイホームを提供している。

中国・蘇州市に大規模マンション建設 社会貢献としてカンボジアには学校も

急成長を遂げた同社の歩みも、すべての時期において必ずしも順風満帆ではなかった。
「大手デベロッパーも廃業に至ったリーマンショック時には、社内のあらゆるコストを削減するだけでなく、企業を存続させるための苦渋の選択として、大規模なリストラ策も講じずには持ちこたえられませんでした」(深川氏)
いよいよマンションが売れない時代が到来。同社は低迷する環境の中に打開策を探った。
「経営難で早期現金化を希望するデベロッパーから物件をまとめて買い取って低価格で販売したり、建設中に事業を中断した物件を当社で引き継ぐなど、いわゆるアウトレットマンション事業です。途上でストップした物件をリムーブすることで、次のステップを失っていた街を活性化することができるのです」(深川氏)
これは現在同社が推進する市街地再開発事業に受け継がれている。
また、国内で培ったマンション分譲事業をベースに海外にも進出。2013年には中国・蘇州市で「北極星花園(ポレスター ガーデン)」の建設に着手。
「中国にはまだあまり内装付きの分譲マンションがありませんでした。そこで日本と中国それぞれの良いところを融合し、徹底した施工管理によって高品質な住居をつくりました。内装付きの分譲マンションを現地に受け入れられる適正な価格で販売することにより、12棟、853戸という大規模物件が、早期に完売しました」(深川氏)
大手デベロッパーも苦戦する中国で成功を収めた同社は、さらなる海外展開を目指す。また、都内では海外投資家向けの物件を展開するなど、インバウンド、アウトバウンドを積極的に推し進めている。
これら多岐にわたる事業に貫かれているのが、同社の「利他と感謝」という経営理念だ。
「顧客、社員、株主、社会、家族、自然など自分以外のすべてを利することを喜び、感謝が感謝を生む人間社会実現のために、私たちは利他と感謝の精神で取り組んでいます」(深川氏)
社会貢献事業として同社はカンボジアに学校建設を進めており、来年1月には開校式を迎える予定だ。
確かな経営理念のもと事業領域を拡大し、社名の由来である毬藻(まりも)のように、しっかりと着実に、今後も大きく成長を続けていくことだろう。

※「賢者の選択」より転載

記事一覧はこちら
ページの先頭へ