- 求人難の中、1万人のアルバイト講師を集める個別指導塾 講師の仕事を通じて自分自身も成長できるプログラムとは
- 株式会社東京個別指導学院
代表取締役社長 齋藤 勝己
業種・業態を問うことなく労働力不足の深刻化が進み、企業の人材確保が難しい状況だ。こうした状況にありながら、多数の大学生講師が活躍し、事業成長を遂げているのが株式会社東京個別指導学院だ。「当社の個別指導塾は首都圏、関西地域、名古屋、福岡に245教室を構え、在籍生徒数は3万5,000人を数えます。指導にあたる講師は今年5月に1万人を超えました。その85%を大学生が占めており、当社の事業成長を支える重要な存在になっています」(齋藤氏)
高い顧客満足度を誇る同社の教育サービスを受けたいという人は増え、この6年間、毎年増収増益を達成。着実な成長を遂げている。同社の躍進に貢献し、大きな原動力になったのが大学生アルバイトの講師だ。学生間の口コミなどでも評判が高く、同社で働きたい学生が増えているのだという。 「当社は人ビジネス。人が価値を生む仕事です。生徒に寄り添い、成長に関わり、喜びを日々分かち合えるのが、講師という仕事の大きな魅力です。当社ではさらに、講師自身も仕事を通じて成長できるという、2つの喜びが得られるのです」(齋藤氏)
同社には、講師の成長を会社全体で支援する独自のプログラムがあるという。「TEACHERS‘ SUMMITは『実践を通して学ぶ』『主体的に働く』を仕組み化したものです。講師がチームとして教室の年間計画を立てて、1年をかけてPDCAを回し、成長していくプログラムです。年間のサイクルの中で、他教室の取り組みや改善策を互いに学び、高め合う、ナレッジ共有の場も設けています」(齋藤氏)
毎年9月に中間報告会、1月に地域ごとの代表教室を決めるプレゼン会を開催。年度末の大総括会では、各地域代表が1年間の成果をプレゼンし、全参加講師の投票で最優秀教室を選出する。「この取り組みを続けてきて、人の成長が連鎖するようになったことを実感しています。『すべては生徒のために』という共通の思いがチームの目指す未来になることで、集う人の成長の連鎖につながっているのだと思います」(齋藤氏)
企業が就職活動する大学生に求めるのは、まずコミュニケーション力。さらに主体性を重視すると言われている。同社で講師アルバイトをした経験から得られた高いスキルは、就職活動や社会人として歩む、その先の未来でも生かすことができる。「講師の口コミで、感動の体験や働く楽しさなどが友人や先輩後輩に伝わり、自分の意思で積極的に応募する学生が増えています。また、当社に通い、受験を終えて大学に進学した生徒が、アルバイト先として当社を選んでくれるケースが多いのです」(齋藤氏)
現在では、かつて生徒として学んだ大学生が、講師アルバイトとして戻ってくるルートが定着している。実際に教わった経験が指導に生きているのだ。「2017年度から大学3年生を対象にした成長支援プログラム『リーダーシッププログラム』をスタートしました。もともとは、日々教室で汗をかいている講師に感謝の気持ちを伝えたいと思って始めた学びの場です。想いを言葉にして伝えるリーダーシップコミュニケーション、ゴールから逆算する戦略的思考のバックキャスティング、対話を通して関係性を磨くコーチングなどをしっかりと学び、教室で実践することで確実に身につけることができます」(齋藤氏)
参加者数は、初年度は60人、2018年度は120人。今後はさらに増やしていく考えだ。「講師経験者によるOBOG会の組織化も進めています。現役講師の支援のほか、様々な分野で活躍しているOBOGの交流の場としても生かしたいと考えています」(齋藤氏)
教室は違っても、同じ理念のもとで汗を流した仲間。ときにはまぶたの奥を熱くしたような経験を持つ仲間だからこそ、心がつながるのだと同氏は語る。
同社は変わりゆく教育環境にもいち早く対応していく方針だ。「これからの時代はAIを抜きには語れません。当社もAIを活用した新サービスを開発しています。AIは習熟度をリアルタイムに把握・分析して、生徒1人ひとりに対する学習内容を最適化できます。その一方で、信じて励ます、行動を褒める、やる気を引き出すなど、教育の現場には『人でなければできないこと』がたくさんあります。当社のコンセプトは『AI×ホスピタリティ』です」(齋藤氏)
同社は経営に対してもホスピタリティを大切にしている。「当社は『ホスピタリティ経営』を推進してしています。関わる人との信頼関係を何よりも大切に、共に成長し、喜びを分かち合う。それが当社のホスピタリティの価値です」(齋藤氏)
同社では、NPO法人日本ホスピタリティ推進協会と提携して、ホスピタリティに関する資格を取得できる、独自の研修も行っているという。「テクノロジーの進化が進めば進むほど、人間が人間である意味と向き合う時がやってきます。人の心に灯をともすのは人。人と人が触れ合うあたたかいシーンで人は成長します。ホスピタリティをコアにした教育サービスに磨きをかけることで、教育の未来、笑顔あふれる社会の未来に、微力ながら貢献していきたいと考えています」(齋藤氏)
時代が移り変わっても、人間を支えていくのは人間。同社は未来が求める「人」をこれからも育んでいく。
※「賢者の選択」より転載